2013年04月05日

桜舞い散り(前編)

これは「幕末志士の恋愛事情」の二次小説です。
ルートはまた武市先生ですが、糖度は抑え目です。まだ前編だし(笑)
単に時期なので、桜の話を書きたかっただけなのですが・・・地滑り起こしてます。
糖度不足の方は、ひとつ前の作品「その言の葉の意味は」をどうぞ(笑)

そんなにネタバレはしてないと思いますが、本編未攻略の方は閲覧にご注意ください。
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桜舞い散り(前編)                 幕恋創作小説:武市半平太
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「・・・きれい・・・!」
満開の桜に、わたしは思わず声を上げた。
柔らかな風に散りかけた桜は、今が盛りと誇らしくさえ見える。
心が洗われるような美しさ、ってこういうのを言うのかも・・・。

「ああ、きれいじゃのう」

花見に行こう― そう言い出したのは龍馬さんだった。
人の多い桜見物はあぶないと、武市さんは止めたんだけど。
龍馬さんはなんだかんだと言いくるめてこうして出てきてしまった。

・・・ううん、言いくるめて、というのとも違う。
ここ数日、龍馬さんは落ち込んでいた。
龍馬さんだけじゃない、武市さんも、慎ちゃんも、以蔵も考え込んでることが多かった。
だから久しぶりに龍馬さんがわがままっぽいこと言うのを聞いて
武市さんは無下に却下することはできなかったんじゃないかな。。
怒ってはいたけれど、こうして一緒についてきてくれている。

「・・・・・・たしかに。今が見ごろのようだ」

諦めたような声で、武市さんがため息とともに言った。
来る途中はちょっとピリピリしてたけど、無事に着いてほっとしてるみたい。
よかった。何もなくて・・・
そう思って武市さんを見ると、視線に気づいた武市さんが柔らかく笑いかけた。

―どきん!
満開の桜をバックにそんな優しく微笑まれたら、ど、どきどきしてきちゃうよ・・・
うう・・・縁側でのことをどうしても思い出してしまう。
わたしはあわてて目をそらした。
というか、わたしはこのどきどきに慣れる日はくるんだろうか・・・

「そ、そう言えばこの時代も、お花見ってするんですね。」
動揺を隠そうとしゃべったものの、ちょっとわたし、どもっちゃってるし。

「姉さんのいたとこでもやっぱりありました?」
慎ちゃんが話に乗ってきて、ホッとする。
「うん、みーんなやってたよ。でも花より団子っていうか・・・」

お花見って、なんだか宴会の口実みたいなとこ、あるよね。

「わはは、今も未来もかわらんのう。ほれ、茶店がでとる。」
「あは、そうですね。」

みんなで茶店に向かおうとした時、武市さんが桜を仰いでつぶやいた。

「・・・花は桜木、人は武士・・・か」

なんだろ、ことわざかな?
聞いたことがあるようなフレーズだけど…どんな意味だっけ。

「きれいな言葉ですね。どういう意味ですか?」

「・・・桜の散り際の美しさに、・・・武士の潔さを重ねてる言葉だね。」
「武士も桜も、最期は潔いのがいいって意味っス・・・」

武市さんの説明に、慎ちゃんが付け足す。

「・・・・・・。」
龍馬さんは何も言わない。

・・・・・・最期・・・・・・潔いのがいい・・・


その言葉が、わたしに、数日前の夜の記憶を呼び起こした。
龍馬さんが元気をなくす原因となった、あの夜のできごとを・・・




「・・・・・・さん!」
「・・・・・・そんな・・・・」
ばたん!ばたばたばた・・・・

眠りに落ちていたわたしは、騒がしい気配に目を覚ました。
廊下の奥で明りが灯されたらしく障子の隅がほんのりと明るい。
こんな時間に・・・・・・何か、あったのかな。

「武市さん・・・」

不安になって、わたしは立ち上がって武市さんの部屋との境の襖に手をかけた。
と、開ける前に、ちょっとためらう。
これって武市さんが眠ってたら・・・寝顔があったら、わたしってただの覗きじゃ・・・
いやいやいや、非常事態かもしれないんだし!

「武市さん、すいません。何か騒がしいんですけど寝てますか?」

声をかけて、襖をそうっと開ける。
・・・てゆうか、わたし、寝てる人に寝てますかって、何言ってるんだろ。

「・・・・・・武市さん?」

武市さんの寝床は空っぽだった。
何故だかほっと胸をなでおろす。
・・・でも。だとしたらどこへ行ったんだろう・・・

襖を元どおり閉めると、今度はわたしは障子を開けて廊下へと出てみた。
廊下の奥・・・どうやら明りの元は龍馬さんの部屋らしい。
なにがあったのか教えてもらおうと、私は部屋に近づいた。

「・・・・・・上杉が・・・・・・っ!」

龍馬さんの緊迫した声に、びくりと足を止める。
とても入っていけるような雰囲気じゃない。
慎ちゃんの声が押し殺すように聞こえた。

「・・・・・・亀山社中の盟約に違反の咎で・・・切腹、と・・・」

え?
今・・・なんて・・・
切、腹・・・・・・?

「なにが違反じゃ!・・・社中ちゅうんはそいったらもんじゃな!
 なぜあいつらにはそれがわからんのじゃ・・・」
「龍馬さん・・・」
「・・・だが結局は武士の集まりだ。」

武市さんの声。
やっぱり中にいるんだ。

「・・・薩摩の手前もある。・・・武士なりの責任の取り方があろう。上杉はそれをしたんだ」
「それは・・・そうっスけど・・・」
「・・・・・・わしがいれば・・・」

龍馬さんが苦しそうに言葉を押し出した。

「わしがいればそんなことはさせんかった」
「・・・言うな龍馬」
「じゃが・・・!」
「お前にそう悔やまれることをあいつが望むと思うか!?」

武市さんが声を荒げる。
わずかに震える声色に、わたしは、龍馬さんだけではない、武市さんが受けた傷を思った。

「・・・上杉は武士として最期まで生きた。・・・潔しと褒めてやれ」

――――― 潔し?
切腹がいさぎよいの?
それが見事だって褒めなきゃいけないのが武士だっていうの?
そんな・・・

「・・・龍馬さん、今夜はこれ以上騒いだら姉さんを起こしてしまいます」
「・・・・・・そうか・・・そうじゃな。」
「明りを消して横になれ。僕らも戻る。」

部屋の中で立ち上がる気配に、わたしは、はっとして廊下を戻った。
どくどくどくどく・・・
心臓が別の生き物のように騒いでいる。
吐く前みたいな気持ち悪さだけど、吐きたいわけじゃない。
わたしは、浴衣の上からギュッと胸を押さえた。

音をたてないように部屋に戻り、ぺたんと布団の上に座る。

切腹・・・・・・
何があったかはわからないけど、何があったにしろそんな・・・
そういう時代だって、知ってたはずなのに、きっとわたし、わかってなかったんだ。
だけど・・・そんなのわかりたくない。
わかりたくなんか・・・ないよ。

とす、とす、とす・・・
「!」
武市さんの足音が戻ってくるのを聞いて、わたしは布団の中にもぐりこんだ。
足音が、わたしの部屋の前まで来て、止まる。
「・・・。・・・・・・起きてる?」

障子の外から武市さんの小さな声。
わたしは、息をするのもやめて、被った布団を握りしめる。
今は会いたくない・・・
わからないの、どんな顔をしていいか。

「・・・・・・寝てる、か。・・・・・・おやすみ、

武市さんは結局障子を開けずに部屋に戻った。
寝てるふりしてやり過ごしたのはわたしなのに、
不意に襲った寂しさに身体を起こしそうになる。

カララ・・・パタン。

障子の閉まる音。
寝床に入る衣擦れの音。
耳に残る、武市さんの声。

武市さんがくれた、やさしい音ががあちこちに残っている。
でも。
暗闇の中でそれを追えば追うほど、意識の底から黒い不安がもたげてくるのを感じていた。

切腹・・・武士・・・
武市さんも、みんなも・・・・・・武士だという事実に・・・・・・
言いようのない不安がわたしをすっぽりと包むようで。
その夜は朝まで眠ることができなかった・・・。



後編へつづく>




posted by ふじ at 01:15| Comment(0) | 連作長編―武市 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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